【開催レポ】第20回知財若手の会「若手LT会 〜知財・キャリアについて語ろう〜」

チザワカ

2026年6月13日、第20回目となる「知財若手の会(通称:チザワカ)」を、東京・神田の「RIVERLD神田」にて開催しました!

節目の第20回は、若手自身が主役となる「ライトニングトーク(LT)大会」。今回は1人15分という“しっかり語れる”枠を設け、6名の若手がリレー形式で登壇しました。「知財・キャリアについて語ろう」をテーマに、知財実務・社外活動・情報整理・専門家報酬・学びの楽しさ・広報まで——専門性も関心の方向も十人十色の発表が並びました。

1. 「経験不足」を学びに変える ― 侵害予防調査の型を共有

そら さん
(メーカー知財部)

トップバッターのそらさんは、ご自身が「経験が足りない」と感じていた侵害予防調査をあえてテーマに選び、勉強した内容を体系立てて共有してくださいました。調査の目的を「自社製品が他社特許を侵害することで生じる損害を回避し、事業を安定して継続させること」と定め、実施・技術的範囲・差止/損害賠償といった特許法上の根拠から丁寧に押さえていきます。

その上で、5W1H+How Muchによる観点整理、リスクに応じた検索式の設計(FI・Fターム・キーワードの広狭の使い分け)、そして「再現率」という指標まで、調査の“型”を分かりやすく言語化。参加動機に挙げていた「記憶定着と発表能力の向上」のとおり、学んだことを人に伝わる形へ落とし込むこと自体が学びを深める——LTという場の価値を体現する発表でした。

2. 社外コミュニティで「野望」を叶える ― PLASDOCオンライン研究会の挑戦

とおさか さん
(メーカー知財部)

とおさかさんは、化学メーカーのサーチャーが集う社外研究会「PLASDOCオンライン研究会」(1980年発足)での活動を紹介。IPランドスケープや各種特許調査を主軸に活躍されるなかで、2025年度は同研究会の会長を務め、テーマ設定段階での“困りごとブレスト”の導入、会議時間の短縮、発言バランスの改善、仮説・検証フレームの導入など、就任時の抱負を一つずつ形にしてきた「叶えた野望」を振り返ってくれました。

さらに今年度は、メンバー定着率の向上と「海外進出(台湾出張)」という新たな野望を提示。社外コミュニティを“受け身で参加する場”ではなく“自分の野望を叶える場”として活用するという姿勢は、チザワカに集う若手にとっても大きな刺激となりました。

ご興味のある方はPLASDOCオンライン研究会にご参加ください。

3. 「仕組み作り」が目的化する罠 ― 外部脳への挑戦と失敗

こっとん さん
(メーカー知財部)

こっとんさんは、「学ぶ領域の拡大」「師の不在」「時間不足」という3つの壁に直面するなか、Obsidianを“外部脳”として活用し、日々のフロー情報を自分だけのストック情報(本質)へ転換しようと試みた経験を共有。ところが、プラグインやローカルLLMの導入といった「仕組み作り」そのものが目的化してしまい、知識が「血肉」にならなかった——という、あえての“失敗談”を率直に開示してくれました。

「溢れる情報をいかに自分のDB(土台・実力)に変えるか」という問いを参加者に投げかけ、会場では活発なディスカッションに発展。きれいな成功談ではなく等身大の試行錯誤をオープンに語り合えるのは、若手同士で語るチザワカならではの一幕でした。

4. 弁護士報酬の在り方が知財戦略を動かす

匿名
(法律事務所・弁護士)

発表者は、普段あまり結びつけて語られない「弁護士報酬」と「知財戦略」をつなぐ視点を提示。タイムチャージ/着手金・報酬金/固定/顧問/成功報酬という主たる報酬モデルを提示したうえで、「何に対して・どのように払うか」によって弁護士のインセンティブ=動き方が変わるのではないか?という問題提起をしてくれました。

さらに、知財のフェーズ(権利化、訴訟など)ごとに最適な報酬モデルが変わりうることを示したうえで、「報酬は価格表ではなく戦略の設計図」というメッセージで締めくくりました。発注する立場として弁護士や専門家とどう付き合うかを考えるうえで、明日からの実務にすぐ効く気づきを与えてくれました。

5. 学ぶと世界の解像度が上がる ― 大人の学びとしての「学会」のすすめ

吉倉 さん
(監査法人勤務)

吉倉さんは、「学ぶと、見えているものの解像度が上がる」という実感を、資産除去債務(オフィスの原状回復費用)という具体例を通じて体験的に紹介。同じオフィスの写真でも、建築・法務・会計の知識があると見えてくる情報が一変する——という“解像度が上がる景色”を、クイズ形式で参加者と一緒に味わいました。

そのうえで、大人が学ぶ手段の一つとして「学会」への参加を提案。学会を「研究成果の公表と討議を通して、学術の発展と社会還元を促進する団体」と定義し、職場以外のコミュニティができる・違う業界や価値観を知れるといった魅力を熱く語ってくれました。知財に限らず“学び続けること”そのものを楽しむ姿勢に、背中を押された方も多かったのではないでしょうか。

最後は、「知財学会(2026年12月5日、6日@東京科学大学 大岡山キャンパス)に参加しましょう!」と締めくくりました。

6. 専門知識を「身近」に届ける ― 広報1年生の試行錯誤

ハル さん
(著作権管理団体・広報)

ハルさんは、「著作権をもっと身近にしたい」という想いから取り組んだSNS発信の試行錯誤を共有してくれました。キャラクターを活用した会話形式のアニメーション動画、視聴ターゲットの細分化、YouTubeとnoteの連携といった工夫で、再生数を20前後から191まで伸ばした実践を、率直な手応えと課題とともに紹介。

「著作権」そのものではなく身近な悩みから入る、専門家目線ではなく受け手目線で考える、双方向性を意識する——といった気づきは、“専門知識をどう伝えるか”に悩むすべての知財パーソンに通じるもの。「まだまだ試行錯誤中」という等身大の言葉が、かえって多くの共感を呼んでいました。

おわりに

チザワカは、「若手が安心して学び、交流できる場」を大切にしています。今回のLT会では、知財実務から社外活動、情報整理、専門家報酬、学びの楽しさ、広報まで、実に多彩なテーマが並び、若手一人ひとりが自らの言葉で発信する熱量にあふれた会となりました。発表後の質疑応答はもちろん、イベント終了後に会場近くで開いた懇親会でも、立場を越えた率直な対話が広がっていました。

「人前で話す練習をしてみたい」「若手同士で考えていることを話してみたい」——そんな想いを持つ方にとって、チザワカは最初の一歩を踏み出すのに最適な場です。一人での参加でも、運営メンバーや周りの参加者が温かく迎える、非常にフラットなコミュニティですので、どうぞご安心ください。

最後になりますが、勇気を出して登壇してくれた6名の皆さん、ご参加いただいた皆さん、そして本イベントを支えてくださったスポンサーの皆様、本当にありがとうございました! 次回もどうぞお楽しみに。